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LCKトップ選手の法人受け取りスキームに脱税疑惑、問われる実質課税と移籍市場への影響

韓国の『リーグ・オブ・レジェンド』プロリーグ(LCK)において、高額年俸選手が個人法人を設立して報酬を受け取るスキームに対し、脱税疑惑と税務当局の監視の目が向けられています。韓国メディアの報道を契機に、選手たちが自主的な法人整理に乗り出す背景、韓国税法における実質課税の原則、そして世界大会後の移籍市場やチームのサラリーキャップ負担に及ぼす影響を解説します。

出典: GameLook

この記事の目次

韓国の『リーグ・オブ・レジェンド』(英雄联盟)トッププロリーグ「LCK(League of Legends Champions Korea)」において、トップクラスの高年俸選手たちが個人名義の法人を設立し、年俸を法人の売上として受領していた実態が浮き彫りとなりました。現地メディアのInvenが報じたこの問題は、近年芸能人や配信者の間でも問題視されてきた過度な租税回避の手法と酷似しており、韓国eスポーツ界に大きな波紋を広げています。

現時点で韓国国税庁から公式な追徴課税処分や告発を受けた選手は確認されていないものの、税務リスクの顕在化を警戒した選手や所属事務所は、当局の本格的なメスが入る前に法人の解散や契約見直しといった「事態の収拾」へ一斉に動き出しています。

報じられた実態:個人法人を通じた年俸受取と税率格差

今回の報道によると、LCKの上位チーム(西部リーグ)に所属し、年俸5億ウォンから10億ウォン(約5500万〜1億1000万円)クラスを受け取る高額契約選手の相当数が、個人ではなく自身が設立した法人名義で年俸を受け取っていたとされています。具体的な仕組みは、所属球団が選手個人の法人に対して業務委託や報酬相当額を支払い、法人側がチームへ税務上の領収書を発行するというものです。すでに少なくとも3件の具体例が把握されており、業界関係者は実際に関与している選手の数はこれを大きく上回ると証言しています。

選手たちが法人受け取りを選択した最大の動機は、個人所得税と法人税の税率差にあります。仮に年俸5億ウォンの選手を例に試算した場合、個人所得として受け取ると各種控除後の課税標準は約4億8000万ウォンとなり、最高税率40%の枠に達します。地方所得税を合わせると納税額は約1億8300万ウォンに上り、年俸の約36%が税金となります。

一方、全額を法人の事業収入として計上した場合、2億ウォン以下の部分には10%、それを超える3億ウォンには20%の法人税率が適用されます。地方所得税を合算しても税額は約8800万ウォンにとどまり、単純計算でも1億ウォン近い税負担の差が生じます。もちろん、資金を個人へ還流させる際には別途課税が発生するものの、法人経費としての計上や所得の分散、納税時期の繰り延べが可能な点が、これまで業界内で重宝されてきました。

この状況に警鐘を鳴らすきっかけとなったのは、ある有名選手に対する税務調査の着手でした。この調査自体は法人スキームと直接関連したものではなかったものの、事態を重く見た複数のエージェント会社が税理士に相談したところ、「現状の運用を放置すれば、合法的な節税ではなく脱税と認定される危険性が極めて高い」との指摘を受けました。さらに別のLCK選手2名も税務当局の調査対象になっていると伝えられ、危機感を強めた有力選手たちが会計事務所を通じて自主的な法人清算へと舵を切ることになりました。

なぜ問題視されるのか:実質課税の原則とリーグ規定の境界線

選手が法人を設立すること自体は違法ではありません。しかし、問題の本質は実際の契約関係と労働実態にあります。韓国の『国税基本法』では、契約書の名義ではなく「所得が実質的に誰に帰属しているか」「取引の実質が何か」を基準に判断する実質課税の原則が定められています。

LCKのプロ選手は通常、球団と専属契約を締結し、チームのゲーミングハウスで共同生活を送りながら、定められたスケジュールでスクリムや個人練習をこなします。監督やコーチの指揮命令下で活動し、チームが指定する大会や公式イベントに出場するその実態は、独立した事業者というよりも、球団に専属する労働者に極めて近いものです。そのため税務の専門家からは、法人名義で受領した年俸であっても、実質的には選手個人の勤労所得と判定される可能性が高いと指摘されています。

韓国の法務法人「華友(HwaWoo)」のホ・シウォン弁護士は、本件を芸能人の一人法人問題と同質のものと位置づけています。同弁護士は、法人を通じて実質的な事業が行われておらず、所得を法人にプールして不必要な私的支出を経費処理した上で配当や給与として受け取る行為は、脱税と判断されるリスクを孕んでいると解説しています。選手側が一斉に法人清算へ動いている現状についても、追究を受けるリスクを自己判断した結果の防衛策であるとの見方を示しました。

さらに、この問題はプロ選手としてのライセンス維持にも直結します。LCKの公式規程集では、選手が犯罪行為の捜査対象となりリーグに悪影響を及ぼした場合、最大1億ウォン以下の罰金や最長72か月の出場資格停止、さらには永久追放といった重い処分が定められています。LCK事務局は今年5月、本規定の適用範囲を「刑事責任を問われる重大事案」に限定し、通常の税務修正や追徴課税といった行政手続きは処分対象外とする解釈を示しましたが、もし脱税事案として刑事告発へ発展すれば、選手生命そのものが脅かされることになります。

なお、LCK事務局は不公正な契約を防止するために契約書の承認権限を持っていますが、年俸の支払い方式や配分はあくまで球団と選手間の私的合意に基づく領域です。第三者である事務局が支払形態を一方的に強制することは越権行為にあたるため、制度的な介入には明確な限界が存在します。

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今後の注目点:移籍市場での年俸高騰とサラリーキャップ制度への影響

今後最も注視すべきは、世界選手権(Worlds)閉幕直後に本格化する移籍市場(ストーブリーグ)への波及です。個人法人を通じた受け取りから個人名義への正常化が進めば、同じ契約金額であっても選手の手取り額は大幅に減少します。法人特有の経費計上や課税の繰り延べが使えなくなるため、選手側が従来の「手取り水準」を維持すべく、契約交渉においてより高い額面年俸を要求する可能性が浮上しています。

球団側にとっては、同じ戦力を維持するためにより多額の人件費を投じる必要が生じます。これはLCKが導入している「均衡支出制度(SFR / サラリーキャップ)」における支出総額を押し上げ、上限超過に伴う贅沢税(ラグジュアリータックス)の負担増に直結します。今オフの契約更改や移籍交渉では、単なる総額の交渉にとどまらず、税務処理の手法や実質的な手取り額を巡る駆け引きが大きな争点となる見込みです。

あわせて、法人の整理や税務処理の正常化を支援するため、所属選手を提携先の税務法人へ斡旋して手数料を得るエージェント企業の動きなど、周辺ビジネスの変化も観察されています。急激な産業化の裏で置き去りにされてきた報酬受け取りのガバナンスに対し、当事者である球団と選手、そしてリーグ全体がどのような標準化モデルを打ち出せるかが問われています。